ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

天満俊秀 ギターソロライブ with 天満智恵子@元町 ALWAYS(2023/08/18 ライブレポート)

ギター教室の先生である熊谷朋久先生にもお師匠様がいらっしゃるワケで、クラシックギターやジャズギターもきちんと師事を受けられているけれど、所謂フィンガースタイルのソロギターに関しては、天満俊秀先生に師事してられました。私がソロギターに転向した頃から、天満先生のお話しは聞いていて、演奏だけでなく人間的にも大変素晴らしく魅力的な方だと熱く語られ、すぐにCDを取り寄せて聴くようになりました。その注文のやりとりでも、天満先生からメールを頂いたりしたけれど、とにかくちゃんとした自分の考えを持って、音楽と向き合い、活動されているのが伝わって来ました。

今は宮崎で10年ほど暮らされている天満先生。その理由も、日本の伝承音楽(民謡)を知るには、自らしっかりと農耕に身をやつし、生活してみないと心が分からない…とのことで、元々お祖父様のお家だった場所で、畑を耕しながらレストランなど営まれる最近。家庭菜園程度ではわからない、本当の農家として暮らされているようです。その甲斐あってか、コロナ期間中の2年ほど前に、10年がかりで構想していた、民謡をソロギターでアレンジして弾いいたアルバムを発表。それ以来初めての関西でのソロライブでした。もちろん、私にとっても、天満先生のソロライブは初めて。前回は5月のサウンドメッセで、打田十紀夫さんとご一緒だったので、また違った楽しさ・趣きだった。

 

これまで活動されて来た中で、カントリーブルースと、アイリッシュ音楽が天満先生の主軸になられていて、この二つは、アメリカでロックを生み出した要素になっているとのMCもあり、とにかく先生は、物事を突き詰める方なんだなぁ…と思いました。元々ロック好き、と仰られていたけれど、それを源流へと遡ると、ブルースとアイリッシュがあるんですね。でも日本人がアイリッシュを弾いていると、海外の人に「どうして日本人なのにアイルランドの音楽弾いてるの?」と度々尋ねられて来たそうで、その度にちゃんとした答えがないことで、ご自身の音楽に疑問を持った時期があったとのお話しも…。アイリッシュはアイルランドの風土の中で、人々が生活の中から自然に紡いで来た音楽。楽譜もなく、誰かが誰かとその場で弾いたセッションが曲になったり、また名も知らないような人が弾いた曲が伝えられてきたり、まさにアイルランドの伝承音楽です。その結果、日本人なら日本の伝承音楽と向き合うべきではないか?と思われた、と。ただ、それをフィンガースタイルのギター音楽として、先生が納得する形に表現するために時間がかかったのだとか。宮崎の暮らしが10年になろうかと云う頃、急に形になりだし、一気にアレンジが進んだそうです。

 

そうやって出来たアルバム『春秋の陽炎』には、皆が知ってるタイトルの曲や、地方のマニアックな民謡が、ギター音楽として完全に昇華された素晴らしいアルバム!

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今回のライブでは休憩を挟んで二部制になっていて、渾身の日本の伝承音楽は、後半にたっぷり聴かせて頂くことができました。アルバムで聴いていた時は、いい意味で日本っぽさを感じない、とても洗練された感じがしたけれど、ライブハウスの空間で、お客さんも入っての空気感で聴く生演奏は、まさに民謡で、人間っぽさを感じものでした。温かくて、長閑で、でもやっぱり先生のアレンジは美しい。

しみじみこの日のライブを聴けてよかった~と思った、味わい深いプログラムでした。

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アイルランドの音楽をギターで弾く時は、チューニングが所謂ダドガドのDADGADを使うことが多いと云うことですが、日本の民謡にも、このチューニングを使うことでとてもアレンジが進んだそうです。

途中、いま、地元産の木材(朴木)を使ったギターをモーリスで製作しているお話しもあり、先生が宮崎で生活する中で繋がった人達と、新しい展開が広がっているようで、これからが楽しみに感じました。

 

前後しますが、ライブの前半はブルースとアイリッシュが中心。途中、バリトンギターを使った曲もあって、これがまた凄くカッコ良かった! 思わず欲しい!と、来場されていたモーリスギターの大阪支店長にお話し伺ってしまいました。まだ流通してないそうですが、オーダーしたら作ってくれるそうです。いや、私には無理です(笑)。

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そして途中、奥様でフィドルを演奏される天満智恵子さんとのジョイントも楽しく、このスタイルで演奏されるアイリッシュは郷愁が増して雰囲気たっぷり。しみじみ沁みました。実は私も以前、アイリッシュのバンドの練習に混ぜてもらって、少しダンス音楽を演奏してみたこともあるのだけど、クラシックのヴァイオリンの弾き方と、アイリッシュのフィドルの弾き方って、弓の使い方とか、音のアクセントとかが、明らかに違うのだなぁ…と、智恵子さんの演奏を聴いていて思いました。ゆったりした揺らぎがあって、人間らしい自然な表現だなぁ…と。すごく素敵です。そして、ギターとも合うんですよね~。いいなぁ。

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熊谷先生にソロギターを教えて頂くようになってから、天満先生の演奏を生で聴かせて頂くのをずっと楽しみにしていきたので、今回やっとの実現で本当に嬉しかったです。端正で楽しい演奏。綺麗なだけじゃないギターの音も、音楽って人間が奏でるものなんだって伝えて下さっています。そして、ウワサのMCもやっぱりとっても楽しくて、お話しが上手。なかなかの長丁場のプログラムだったけど、あっと云うまに時間が過ぎて、アイルランドのパブよろしく、夜通し楽しめそうでした。また是非何度でも、聴かせて頂きたいライブでした。天満先生みたいにギターが弾ける日が来たらいいなぁ。

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