ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

小松亮太プレミアムライブツアー2022 ~蛇腹楽器奏者の祭典~ @いずみホール(2022/09/02 ライブレポート)

先週の押し弾きでもゲストやったけど、バンドネオン奏者の小松亮太さん。7月頃からFM COCOLOでこのライブのCMが流れていて、気になる~行きたい~…と思っていたけど、他のライブ予定があったりとかで、迷っていた。そうこうする内に、なななんと!押尾さんがゲストに決まって、そら行きますわな(笑)。で、行って来ました。なんか、押尾ファンがチケット取ったタイミングが皆一緒やったんでしょうか?席が一箇所に固まってた気がするなぁ…。

 

何回来ても、木で出来たホール…と云う印象が柔らかな素敵な場所、いずみホール。押尾さんの弦音ライブの時は前の方やったけど、今回は後ろの方。でも全体がよく見えて、音の響きもすごくよく感じられた。スピーカーも入っていたけど、自然で気持ち良かったです。

 

今回は小松亮太さんのツアーではあるけど、ボタン式アコーディオンの桑山哲也さんと、鍵盤式アコーディオンの佐藤芳明さんと一緒に、蛇腹楽器3台でのコンサート。まずは小松さんのオリジナル曲を2曲でスタート。これがとても聴きやすい曲で、タンゴと云うよりポップでポピュラーな感じ。そして、流石に蛇腹楽器が3台揃うと和音の響きと迫力が凄くて、低音こそすこし足りないものの、一瞬、いずみホールの背面に控えるパイプオルガンが鳴ってるんじゃないかと錯覚するほどの音圧でした。…と感じていたら、その後のMCで、ボタン式アコーディオンは元々、教会音楽を手軽に演奏するために、パイプオルガンを小さくできないかと考えて作られたそうで、なるほど!と思った。

 

今までアコーディオンの演奏は何度かライブで観たことがあったけど、バンドネオンは初めて。それこそラジオで音だけは聴いていたけれど、実際弾いている姿を目にして、こうやって弾いてるのかー!!と、かなりビックリした。右足を高さ30~40cmの台に乗せて、その足の上にバンドネオンの中心を置き、時に左右に、時に右だけ・左だけを押し引きして演奏するスタイル。音の違うボタンが左右に設置されていて、更に押す時と引く時で出る音階が違うと云う、めっちゃ難しい楽器。だから演奏している姿もなかなかにアクティブでした。タンゴの跳ねるようなリズムも、足や楽器そのものでリズムを取ながら演奏するので、見ていてとても楽しい。そして、けっこう体力要るんちゃうか?!と思ってしまった。ただ、アコーディオンに比べて小振りなので、6kgの重さだから軽いとは言っていた…。いやいや、6kgって結構重くないですか?レスポールより重いよね(笑)

 

今回は休憩を挟んで、一部・二部制。前半は蛇腹楽器それぞれの違いをメインに、色んなタイプの曲を合奏やソロで演奏して下さり、もう、どれもこれも楽しい。それぞれ音色違うでしょ?ってしきりに言われるけど、すみません、ふんわりしか分かりませんでした(汗)。ただ、バンドネオンが特に鋭い音だな~と云うのだけは印象に残った。

お三方それぞれご自身で作曲されるので、その違いも面白かった。

途中、それぞれの楽器を交換しての「むすんでひらいて」演奏トライアルの時間もあったけど、これは、それぞれの楽器演奏の互換性がいかにないか、と云うことを証明するための企画。弾き方が全く違うので、似た者同士の楽器でも、他の楽器は弾けないんですよ~…と云うこと。でも今日がツアー最終日だったので、皆さん結構器用に弾かれてました(笑)。

前半ラストは私でも知ってるタンゴの名曲、『ラ・クンパルシータ』。

 

15分の休憩を挟んでの後半は、ピアソラの曲からスタート。昨年が生誕100周年、今年が没後30年だそうです。もちろん名前はよく知っているけど、お恥ずかしながら、曲はリベルタンゴくらいしかはっきりは知らないかもー。

でも後半1曲目『オブリヴィオン』がとにかく素晴らしかった。やっぱりバンドネオンが輝くのはこう云う曲なんやなぁ~…と、つくづく思う。ピアソラの曲に対する小松さんの解釈や想い入れとかもあるのかな? とにかく心にグッと来ると云うか、琴線に触れるを通り越して、琴線わし掴みにされる感じ(笑)。スタンダードなタンゴのリズム“ハバネラ”と云うものが使われているそうで、なんともおセンチな曲でした。

ピアソラの2曲目『フーガと神秘』は反対にちょっと前衛的な感じがするのは、フーガがミニマルっぽい雰囲気だからかな? とにかくこれも蛇腹楽器3台ですごく面白かった。3曲目『アディオス・ノニーノ』も、オリジナルではなく多重録音版を参考にしたとのことで、これまた新しい感じのタンゴで面白かった。

 

そしてピアソラが3曲終わったところで、ゲストの押尾コータローさん登場。

まずは小松さんとお二人でのセッション、昨年の押し弾きでも聴かせて頂いた『黄昏』。韓国や世界でも人気があると云うお話しなんかも出つつ、上手くいくかな~?なんて小松さん仰ってましたが、上手く行くに決まってる名曲に、小松さんの自由なバンドネオンのメロディーがものすごく流麗で気持ちいい。そして、バッキングと交代しての押尾さんのソロ弾きも、オリジナルに忠実と云うより即興的な演奏で、これがまた聴く方もこの一瞬に集中する感じでドキドキした。バンドネオンの音って輪郭がはっきりしていて、アコーディオンほど気怠さがないように感じるのだけど、だから少し明るい印象もあるのか、なんとなく黄昏時と云うより、昼下がりのような雰囲気を思った。

お次は押尾さんのソロで『GOLD RUSH』。何度も聴いているけれど、いずみホールであまりエフェクトのかかってない音での演奏は、押尾さんのギターの扱いの素晴らしさがダイレクトに伝わって来て、改めてスゴイな~…と聴き入ってしまった。今日この演奏を初めて聴いて、押尾さんのファンになってくれる人がいたらいいのになぁ…って思った。

本編の最後はこれまた有名曲、チック・コリアの『スペイン』。みなさん、それぞれ色んな場所で活躍されているミュージシャンではあるけれど、何かセッションする時に、度々この曲のリクエストが来るので、これくらはできるようにしておかねば…と、ジャンルの範疇外でも弾けるようになった、なんてエピソードを話されていた。何度聴いてもリズムやタイミングが難しい曲だなぁ~と思うけど、流石のセッションでした。

そしてアンコールはやはり押尾さんを迎えての『リベルタンゴ』。間違いないやつ!(笑) 最高のセッションだったけど、『スペイン』同様、やっぱりそれぞれのソロパートがあって、これがとても聴き応えがあるし、それぞれの音楽のバックグラウンドの違いが感じられるのが、今日のメンバーが集まっている醍醐味かな?と思った。

いつもだけど、いつも以上に、今日も押尾さんがそれぞれの方とアイコンタクトして、笑みを交わしながら楽しそうに演奏している姿は、こちらも幸せで楽しい気分になりました。セッション楽し~♪

 

今回サポートギタリストとして参加されていた福井浩気さんも、ベースやパーカッション的役割で、アクセントになったり、ボトムを支えたりと、効果的やった。目立つわけではないけど、大事な役割。

反対に押尾さんのギターは前面に音が出て来る感じで、一気にバンド感溢れるまとまりになる。右手のパームを使ったバスドラが効いててカッコ良かった。押尾さんがソロを弾いてる間、小松さんがバンドネオンを叩いてパーカッションを担当するシーンもあり、なんかその、一生懸命叩いてる姿が、申し訳ないけれど小動物のようで楽しかった(笑)

 

先月出会った井山あきのりさんのアコーディオンと云い、今回のお三方といい、蛇腹楽器もソロギター同様、たった一人でも音楽を完結できる楽器なのが面白いのだけれど、それがまた複数集まったり、他の楽器と混ざった時の分厚さが素晴らしくて、つくづく便利で難しくて面白い楽器だなぁ…と思う。

そしてピアソラと云う人にとても興味が湧いた。小松さんのお話しを聞いていて、既存のタンゴを大切にしながらも、革新的な音楽に挑戦し続けた人なのかな?と感じた。なんと言っても、ちょっと切なくおセンチな曲風がたまらなく好き。
…で、その辺りのタンゴ音楽含め、バンドネオンのことやピアソラのことも、小松さんが書かれた本でしっかり紹介されているそう。ライブ中もアピール!してはったけど、この本、欲しいな~…と思った。今ちょっと無理やけど(汗)、読む時間ができたらAmazonでポチろうかな。



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今回みたいに、とても響きの良いホールで、耳を澄ませて堪能する音楽もいいけれど、例えば町中や小さなカフェ、ライブハウスなんかで生音で味わう蛇腹楽器は最高なんじゃないかと思う。大きなライブハウスでやるなら、ぜひまた押尾さんのギターも交えて、バンドっぽいラテン音楽が聴いてみたいなと感じる。

今回もまた一つ、新しい楽器・新しい音楽をライブコンサートで体験できて幸せだった。どんなアーティストの方と一緒でも、押尾さんのジョイントライブは最高☆