ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

おススメCD:『Acoustic Serenade + 7』リマスター版/中川イサト

このブログに「おススメCD」と云うカテゴリを作ってたことを、忘れるほど更新してへん…と、過去の記事探すのが大変やった(汗)。相変わらず毎月、数枚はアルバムをCDで購入してるのに、もっと書いたら記録になるのになぁと思いつつ、書くタイミングが難しい! だって聴き込むと印象変わるし、好きな曲もその時々で変わる。

 

でも今回は、聴き始めてから、通勤中や家で最初からかなりリピートしたので、なんだか書いてみようと思えた。今更やけど、よくよく考えたらイサトさんのアルバムをCDで購入するのは、今回が初めて。自分でもビックリ。SNSでイサトさんのお嬢様の中川朋美さんが、ほんとに毎日イサトさんの曲を紹介してくださるので、1年以上、ほぼ毎日のように聴かせて頂いていて、それプラス、サブスクで聴くことがあるので、なんだかそれで満足してしまっていた。でも、常々、音楽はアルバム単位で聴かないとアーティストに失礼だ…と思っているのをまた思い出し、痛感することになった。

 

アルバム『Acouatic Serenade』は1982年に発表された、イサトさんの自主レーベルNaniwa Musicから発売された2枚目のアルバムだそう。歌モノではない、完全なソロギターのアルバムとしては、『1310』『Homespun Music』に続いて3枚目なのかな?(違ってたらごめんなさい)。そちらをイサトさんと縁の深いシールズレコードさんが、全曲リマスターして、2023年6月に再発売。以前の音源を知らないので比較できないけれど、とても自然なアコギの音が味わえる、誰が聴いてもいい音のCDだと思います。ほんと、聴きやすい。

 

前半はJazzなどのスタンダード曲をイサトさん流にギター1本で聴かせて頂けるのが6曲。後半はイサトさんのオリジナル曲が5曲。もしかしてアルバム発表当時はLP盤で、A面・B面やったのかな??(違ってたらごめんなさい)。だとしたら、面白い仕掛けだなぁと思うけど、CDで通して聴いても流れ的に大きな違和感がないのは、イサトさんのコンセプトや、その当時に取り組まれていたテーマがあったのかな?と感じさせてもらえる。

 

1曲目「Stompin' At The Savoy」の、チェット・アトキンスみたいにゆったりとしたカントリー調の曲から始まり、Jazzの憂いと洒落っ気がシンプルなギターの音に映える曲が続き、4曲目「St.Thomas」。これが聴きたかった!のでアルバム購入させて貰おう♪と思ったくらい。この曲を知ったのは、我がギターヒーロー・憧れの押尾コータローさんがラジオ番組「押しても弾いても」で紹介されていたのがきっかけ。聴いた時、衝撃やった。ベースの音、どないなってんの?!と思うほど、6弦の音がガンガン連打されていて、めっちゃカッコイイ。今まで聴いたこの曲の印象とも違っていて、イサトさんスゴイな~と思った曲。アルバムの流れの中で聴いても、やっぱり耳を持ってかれる曲。押尾さんにとっても、わざわざラジオで紹介するくらいやから、印象深い曲なんかな?と思う。聴いてると弾いてみたい!と思うけど、いや~…いつ弾けるやら。なかなか挑戦する気にならへんわぁ。…な音数です。(でもこのアルバムのスコアは買っとこうかな)。

 

イサトさんの曲を聴いたり弾いたりするようになって日は浅いけれど、それでもイサトさんと云うのは、自作のオリジナル曲にとても拘ってた方、と云う印象がある。スタンダード曲のカバーはあっても、今みたいに歌モノを沢山ソロギターアレンジするような、そんな流れは当時なかったんやと思う。なので、当然後半のイサトさんの自作の曲がどれも素晴らしい。色んな曲を聴いて、音楽と向き合って解釈を深め、自分自身の感性で表現して行く。そんな取り組みを生涯ずっと続けて来られたであろう、その途中の80年代前半当時のイサトさんのギター音楽がここにある感じ。前半のカバー曲の後に聴くと、よりいっそう、そんな流れが感じられ、変則チューニングや奏法含め、スタンダード曲とオリジナル曲の繋がりのようなものを見付けるのも楽しい。きっと聴く度に、色々見かるんやろうな…と。そしてきっと、自分で弾いてみるともっと、沢山のことを見付けられるんやろうな、と思う。

今回アルバムをCDとして聴きながら、押尾さんだけでなく、岸部眞明さんやシオミモトヒコさん、また、自分がオープンマイクなどでご一緒させて頂いている、長年フィンガースタイル・ギターを弾き続けて来られている先輩方が、イサトさんの曲に夢中になるのが分かる気がする。聴けば聴くほど、弾けば弾くほど、ハマってしまうのやと思う。

 

自分なりに、今回のアルバムの中で「Koppe」と「茴香」がイサトさんっぽい曲やな~と感じたけど、両方ともやっぱりオープンチューニングやからかな。それだけでなく、イントロの表現とか、間の取り方とか、装飾音とか、曲の流れとかが、わ~イサトさんやなぁと思ってしまう。そして、嗚呼、弾いてみたい…と思ってしまう。「ノスタルジック・チューン」のヨーロッパ的な哀愁のあるヴァイオリンの後ろで、同時に鳴る音が少ないからピアノ伴奏とは違うけれど、あっさりと、高音・低音で自由に寄りそうギターもとってもいい。そして最後の曲「せれなあで」の明るい気怠さも、またイサトさんらしいな…と感じる。スライドやハーモニクスのちょっとした音が印象に残ったり、音の積み方も、極めてシンプルなのに独特の美しさがあっていいなぁ。なかなかこうは弾けないだろうな…と思わせられる名曲。

 

そして、このリマスター版CDのボーナス・トラックとして入っている、ライブの音源にもビックリ! これも、イサトさんの生演奏はYouTubeなどで何度か拝見しているけれど、アルバムで改めて聴かせて頂くと「なんじゃこりゃ?!」の演奏レベルで、きっとどのライブでも、毎回こんな安定した演奏されてたんやろなぁ~と思うと、ひたすら感動&感服します。

MCも収録されているので、イサトさんの話し声が聞けるのも嬉しく、高田渡さんの「ボロ・ボロ」や、金森幸介さんとのデュオで知られる「もう引き返せない」ではイサトさんの歌も聞ける、なんとも贅沢なボーナス・トラック。このリスマスター再発を企画されている、シールズレコードさんの選曲も素敵やなぁと思います。

これらのライブは2000年代に、吉祥寺のStar Pine's Cafeで行われたもので、今でもよく名前を目にする会場なので、行ってみたいなぁと思った。そう、こう云うライブ音源を聴くと、ほんとにイサトさんのライブを一度でいいから観たかった…と強烈に思う。仕方ないけど残念すぎる。…ので、その分、押尾さんや岸部さんのライブに通ってしまうことになるのです(言い訳)。

 

聴きたい曲が入っていたので、なんとなくイサトさんのアルバムを初めて購入したけれど、また他のCDも買わなきゃ~と改めて思った。やっぱりサブスクよりCDがいい。一気には聴けないけど、一枚ずつ、順番に聴かせて頂こう♪

 

■収録曲
1.Stompin’ At The Savoy
2.Lullaby Of Birdland
3.Medley:Misty / Star Dust
4.St.Thomas
5.Stella By Starlight
6.Rockin’ Chair
7.Stray Cat Two-Step
8.Koppe
9.ノスタルジック・テューン
10.茴香
11.せれなあで

*Bonus Tracks
12.Bali
13.Chotto Tropical
14.ボロ・ボロ
15.ディープ・リバー・ブルース
16.夕焼け雲
17.もう引き返せない
18..Crescent Moon (remaster)

12.~14.高田渡トリビュートCD発売記念ライブ ソロ
2004年10月 東京 吉祥寺 スターパインズカフェ

15.~17.SEALS RECORDS 10周年記念ライブ with Band
2008年11月 東京 吉祥寺 スターパインズカフェ

18.『中川イサト/Crescent Moon』SEAL-023より

 

meta-company.store

ちなみに裏ジャケットのイサトさんのお写真、よく見るとギターがGravenやった!押尾ファンとしてはなんだか嬉しい、子弟の繋がりを感じます☆