ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

『モリコーネ ~ 映画が恋した音楽家』(シネマレポート)

昨年末から楽しみにしていた映画、やっと観に行くことができた。157分の大作、でも始まって3分で引き込まれて、そのまま最後まで集中力が切れることなく、その音楽と映像に魅了され続けてアッと云う間だった。

そう思えた一番の要因は、このドキュメンタリー映画の監督がジュゼッペ・トルナトーレだからだと思う。これは、モリコーネの伝記映画である以上に、トルナトーレの映画作品なんだと感じさせられた。だからドキュメンタリーなのに、演劇以上のドラマに心揺さぶられ、常にそこにはモリコーネの音楽が流れていると云う、トルナトーレのこれまでの映画そのものだった。

もちろん、そうなり得るだけのドラマティックな生涯がモリコーネの人生なのだけど、きっとそれは、どんな人の一生も、トルナトーレの手にかかると素晴らしい映画になるのではないか?と思わされるほどの美しいストーリーだった。

でも同時に、この映画の素晴らしさはフィクションでは作れないものだとも思った。

とにかく、全てが純粋で真摯。モリコーネの音楽と対峙する様は、現実離れしたフィクションに感じるほど真剣で、生きる事全てが音楽でできているかのよう。そして、トルナトーレの映画への純粋な愛は、「ニューシネマ・パラダイス」を観れば誰もが感じられるものだと思うけれど、彼のモリコーネへの崇拝に近いような尊敬と、家族のような親愛が、このドキュメンタリー映画と云う作品の中で一つになっていた。

もしかするとモリコーネは、音楽を愛しているとは言わないかもしれないけど、やはり愛そのものだと思う。

 

モリコーネが映画音楽に携わるようになってからの歩みは勿論おもしろかったけど、それ以上に、学生時代にどのように作曲と向き合っていたか、映画音楽以前に歌謡曲のアレンジャーなどとしての姿などがとても興味深かったし、映画音楽は崇高な音楽ではないとされていた頃の、音楽家たちの虚栄心や差別などから時代を感じることができた。

これほどの人が、不遇の生涯だったのではないかと思わされるほどの、エピソードが沢山出てくる。もちろんそれ以上に、彼を愛した人も沢山出てくる。

 

観終わって、とにかく色んな映画がまた観たくなった。「天地創造」「シシリアン」「死刑台のメロディ」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」そして「海の上のピアニスト」も。また、沢山のミュージシャンも出演していて、中でもファド歌手のドゥルス・ポンテスはもの凄く印象に残った。ジョーン・バエズも輝いてた。

 

観ていて、自分がどうして泣いてるのか理由の分からない涙が、何度も何度も出てきた。悲しいわけではないのだけど、とにかくモリコーネの音楽に携わる姿に心が震えた。帰り、もの凄く久し振りに映画のパンフレットを購入した。Blu-rayが出たら買うだろうな…と思う。音楽が好きな人みんな観てもらいたいと感じる映画だった。