今年の６月にも開催された、伍々さんの完全生音ライブ。同じ会場で２回目のライブ。とても綺麗なサロン調のお部屋で、少し細長いながら、後方は階段状になっているので、後ろでもとても観やすい。ひじ掛けの付いた贅沢な椅子を並べて、収容人数は50人くらいなのかな？ そんな場所でアンプラグドでアコースティックギターの音を堪能できるなんて、それこそ贅沢の極み。
前回は比較的前の方の席で観たけれど、今回は後ろの席だった。それでもしっかりと音が聴こえて来て、むしろ後ろの方が、部屋に反射して広がりのある音として感じられていたんじゃないかと思うほど。もちろん弾き手の伍々さんの技量・表現力、そしてよく響くいいギターあってのことと思う。
今回も鉄弦とナイロン弦のギターを１本ずつ持ち込んで弾き分けていて、それぞれの良さが感じられた。ただやっぱり、こう云う場所で強いのはナイロン弦の所謂クラシックギターと呼ばれる種類のギターだと思った。音がよく飛ぶと云うか…。でも自分にとっては、鉄弦のキラキラした生音を耳にできる至福は他に代えがたい。
伍々さんファンならみんな大好き「Bluebird」からスタート。少し以前のアルバムから「風待ち」…と爽やかな曲が続き、次の「星さがし」は現在のところ最新アルバムの『Nightfall』から。私はまだ去年から数回しか伍々さんのライブを拝見してないけれど、「星さがし」が１曲目、と云うことが多かったので、途中で聴かせてもらうと、また印象が違って感じられて、曲順って面白いなぁ…と思った。こんなに情景が浮かび、景色が変わって感じられる曲だったのだなぁ～と、今回感じた。
「Eternity」「Rustel」「Moon Shade」とアルバム未収録で配信済みの曲が続き、どの曲も切ない系で、特にこの季節にピッタリの「Rustel」は、秋の少し冷えた空気の匂いまで漂って来そうな叙景的雰囲気。更に配信前の新曲の披露！嬉しかった～♪ とても美しく明るい曲で、すぐにリピートしてもう一回聴かせて頂きたいと思った。
前半最後はこれも伍々さんファンはみんな大好き「Heart」。MCで笑わせてもらい、スピード感と音数に圧倒され、スゲー！となったところで休憩へ。
後半は『Nightfall』の中から度々ライブでも披露されている「Rain」でスタート。6分を超える曲だけれど、展開がドラマチックで、雨の降り方や風の強さまで変化して行く景色が浮かぶような流れは、長さを感じさせず、美しい映像を見せてもらったかのよう。素晴らしい曲。「Night Haze」「Haru」と個人的に好きな曲が続いて、どっぷりと音楽の世界に浸って、ここでも配信前の新曲をもう１曲。SNSでちょこっとフレーズを弾かれていたのが印象に残っていて、曲になるとこんな感じなんだな～…と新鮮だった。早速お気に入りの曲が増えた。
続く「I Got Rythm」「リベルタンゴ」はオリジナルアレンジでのカバーだけれど、伍々さんらしく、伍々さんならではのスイングジャズとラテンテイスト。音楽性と技術と云う二つが、これほど高いレベルで融合すると、こんなソロギターになるのかぁ～…と、伍々さんのカバー曲を聴くといつも思う。圧倒的。
更に圧倒的なのは、何度聴いても最初から最後まで引き込まれる「夜に香る花」。スコアを見たことがないので分からないけど、いつも出だしのコードがめちゃめちゃカッコイイなぁ！と思って、最後の６弦をベチン！と弾き上げる瞬間まで、呼吸が浅くなるくらい集中して聴いてしまう名曲だと思う。カッコイイ…。これが弾けたら最高だなぁ…と薄ぼんやり想うけれど、自分にそんな日は来るのだろうか…（遠い目）
そしてアンコールに応えてくださっての１曲は「a Nocturne」。舞い上がった気持ちをゆっくりと着地させるように、穏やかに爪弾かれると、１音１音がとてもキレイに、でも流れるように聴こえてくる。アコースティックギターって本当に素晴らしい楽器だなぁと、しみじみ感じさせて貰った。
いつもそうだったのかもしれないけれど、自分としては今回特に、それぞれの曲の景色が浮かぶコンサートだったなぁと思った。アルバムの再現ではなく、曲の導入部での＋αの表現や、曲中でもタッチの強弱や微妙なスピードの変化が、静止画ではなく変わって行く情景を見せてくれた。小規模の会場で、生音で演奏されるからこその、繊細な表現と、アコースティックギター本来のポテンシャルを、めいっぱい引き出すことのできる伍々さんのプレーヤーとしての力、アレンジ力が作り出した、コンサートだった。
MCの中で定期的に開催したいとのコメントが嬉しかった。ぜひ、"Solitude #100"を目指して、ずっと素晴らしいコンサートを聴かせて頂きたい。次もめっちゃ楽しみです！
