ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

Obatala Segundo サマーツアー@大阪梅田・Mister Kelly's(2023/07/06 ライブレポート)

5月にジャズヴォーカリストShihoさんのライブで訪れた、大阪梅田の名店・ミスターケリーズ。素敵な場所に出会えたと思ったのに、この7月で30年以上の歴史が終るとのこと。本当に残念です。


なんとかしてもう一度行きたいと思い、特に前回、ピアノの音が自分の好きな感じだったので、そこが堪能できるプログラムを探してたところ、これまたShihoさんがSNSで、オバタラ聴いてる~って投稿されているのを見かけて、全然知らなかったけど、ふと見るとピアノが伊藤志宏さんではないですか! そう、志宏さんも昨年、神戸のShihoさんのライブの時に拝見して、その圧倒的なプレイにノックアウトされた経験が…。

 

全く予習せずに伺って、ライブが始まって30秒。「あ、これは初めて聴くリズムや。凄い!」と引き込まれた。大儀見元さんのパーカッション。自分が知ってるこれまでのリズムと何かが違うと感じたけど、今でも何が違うのか、ちょっと説明できない。ラテン音楽は今まで、音源でもライブでも、度々触れているので、様々なリズムそのものは既知ではあるはず。でも全然違うんです、体感が。しかも大儀見さん、歌めっちゃ上手いし、どう考えても日本人と思えない感じなのだけど、いったいどう云う方なのでしょうか?? 凄すぎます!

今回のライブ中、結局ずっとリズムの感じが最高に気持ち良くて、気兼ねなく音楽の中に漂うことができた。ブレのない正確なリズムなのだけど、人間の感情とか以前の、動物としての躍動を刺激されるような感覚が面白い。ジャズ、と云う人間が作り上げた複雑な音楽に、生き物としての原始的なリズムが融合するMix具合が、めっちゃ良いな~…と云うのが、オバタラをライブで聴いた一番の感想。

mikiki.tokyo.jp

もちろん、そのリズムの上で踊る他の楽器の音もバッキングプレイも最高。そして楽しい。

 

リーダーはトロンボーンの中路英明さん。今回のプログラムのオリジナル曲も、ほぼ中路さんの曲とのこと、凄く聴きやすくて、アップテンポな曲もバラードも流れが美しい。
先月たまたまネットで、村田陽一さんの配信ライブを拝見していた。それも印象に残るめっちゃ素敵なライブだったけど、今まであまりトロンボーンと云う楽器を知らなかったので、メインとして演奏する際、こんなに聴き心地の良いものなのだなぁ~と感じ、それは今回の中路さんでも同じように思った。音数があまり多くないシンプルな演奏と、角のない音が、楽に聴ける理由なのかな?(プレイヤーにもよるのかもしれないけれど…)

 

ギターの鈴木禎久さんの上手さも開いた口が塞がらないものがあり、コモブチキイチロウさんのベースのタイミングの気持ち良さ、岡本健太さんのドラムの軽快さと、どこにもお互いがぶつかる要素なく合わさってる妙に、ただただ心酔。
自分的に今まで「バンド」と云うと、ロックの世界がメインだったので、ジャズやフュージョンのバンドが、これほど互いの空気を読んで綺麗にマッチすると云うことを、近年体験しつつ学んでいる感じ。合奏の時の調和と、そのかわりにソロプレイ時の自由さと、こう云うジャンルの音楽の醍醐味だな~…と思う。

 

…で。お目当ての伊藤志宏さん。いやぁ~、今回も狂気の悪魔プレイが炸裂していて、期待以上でした。と云うか、メンバー多いし、伴奏っぽい感じなのかな?と、ここまでソロを堪能できると思っていなかったので、こんなに弾くんや!と、ただただビックリ。それくらい、あり得ない程のソロ弾きまくりやったんです~。もぉう最高!
よくあれだけ多い音数を細かく詰め込んで、あんなに全ての音が綺麗に響くよなぁ…と、ゲリラ豪雨のように身体に降って来るピアノの音に打たれる気持ち良さに漂ってました。でもその風貌や音楽の雰囲気とは裏腹に、もの凄く優しくトゲがない。そこがスゴイなぁ…と思う。あれだけ弾きまくれば、雑とまでは言わないまでも、感情に任せた攻撃的なトンガリが出来そうなものだけど、志宏さんの音にはそれが、ない。ずっと聴いてられるな…と思う所以かも。そう言えばShihoさんも、志宏さんはピアノもピアノの音も粗末にせず丁寧に扱うよね、とMCで仰られてたのを思い出した。
弾いてる姿を拝見してると、どうしても悪魔が憑依しちゃってるな~と見えてしまうけど(笑)、すっごいちゃんとした方なんだな、と思います。自由にプレイした時に、芯を持って表現をコントロールできるプレイヤーって本当に素晴らしいと思う。

 

途中途中、中路さんや大儀見さんが「オバタラ」の語源でもある、キューバのことや宗教などについて語ってくださり、そんなのを聞くのもとっても楽しかった。
また、アンコールではキューバで使われる楽器のことも少し説明があり、今回のツアーでは持って来ていないとのことだったけど、ギタリストの鈴木さんが所有するギターのご先祖様みたいな「トレス」にも興味津々。6弦ではあるけど、12弦ギターみたいに1コースに2弦ずつ渡してあり、それが3コースあると云う仕組み。どうやって弾くんだろう?? 他にも、サルサで活躍する「ベイビーベース」もレアだとのお話し。楽しい!

そしてもう一つ、メンバーの世代がバラバラのように思うのだけれど、お互いがリスペクトし合っているのが伝わって来て、特に中路さんのミュージシャンシップが素晴らしいと思いました。

とにかくたっぷりとラテンのリズム、ジャズ、フュージョンの音楽としての構成美を味わって帰ることができた、最高のライブでした。また絶対聴きに行きたい! ほんとにまだまだ知らない素晴らしい世界があって、出会いが嬉しいです☆

 

そして自分の中で、Shihoさんをきっかけに広がる音楽の世界が有難く、今回 もひたすら感謝です。

 

それにしても、ミスターケリーズの閉店。残念すぎます(涙)。スタッフさんもお店も最高なのに。以前ピアノ、キーボーディストの松本圭司さんが書かれていたけど、お店の天井が特殊な構造になっているのが、いい音の秘密なのかもしれない。小ぶりだけれど、稀有な音の良さ、無くなるのが本当に勿体ないです。でも最後に出会えて幸せでした、ありがとうございました。

misterkellys.co.jp