ハミングバードの音楽とギター備忘録

ソロギター(Fingerstyle Guitar)の練習帳と音楽日記。

第40回 咲くやこの花賞 贈呈式@大阪市中央公会堂(2023/02/14 イベントレポート)

大阪市が主催しているこの賞のことは、数年前、押尾コータローさんのファンになるまで知らなかった。押尾さんは第20回の音楽部門での受賞者。そして今回は第40回。押尾さんもメジャーデビュー20周年の1年のまだ途中で、なんとも数字が面白い。押尾さんが受賞した時のスペシャルゲストは、クラシックギタリストの福田進一さんだったと云うことも、最近Twitter上で知って、ご縁がクルンと繋がっていて素敵だなぁ…と思ったけど、そのゲストに、今回は押尾さんが呼ばれているとのことで、抽選の観覧希望に目出度く当選し、観に行かせて頂くことができた。

だからもちろん押尾さんが目当てではあったけど、全く存じ上げない受賞者の方達が、どんな活動をされているのか見せて頂けるのも、ふわっと楽しみにしていた。

で、行ってみて。いやぁ~~~、もう楽し過ぎた!!なんたる魅力満載な煌めくセンスの5人なのでしょう!! 2時間休憩なしの授賞式がアッと云う間で、なんなら、もっとお一人ずつお話しを聞いていたかった。

 

最初の方は美術部門で現代的な絵画を描かれている、國久真有さん。大きなキャンバスに、自分の身体を軸にして、半円を重ねて描いて行く技法は、実演を見せて頂かないと、絵からは想像が難しいと思う。今回はビデオでの紹介があり、なんとその姿の美しいこと。フィギュアスケートか新体操のようで、実際、國久さんはアスリートのように無駄のない身体をしてらっしゃった。

何故この表現方法なのか?との問いに、自分を素直に表現するために、真っすぐな線を描きたかった、自分を中心に真っすぐ描いたらこうなったと云う言葉に、ノックアウト。一見、直線と弧は別物のように思えるけど、自分中心…と云う素直さの奥が深い。なんかお話しを伺いながら、素直さんについて教えられているかのようやった。

ご自身でも仰っていたけど、ライブペインティングをけっこう公開されているようなので、是非実際に拝見したいなぁ…と思った。

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お二人目は音楽部門で、オペラ演出家の奥村啓吾さん。まずは耳慣れないそのお仕事の内容から説明してくださり、オペラと云う歌劇に対して、音楽以外の全ての要素を監督されるとのこと。衣装、舞台美術、照明、その他もろもろ全て。同じアイーダを演出しても、コンセプトが違うと全く内容が異なると云うことを、これも映像で見せて頂きながら分かりやすく伝えて頂いた。オペラの本場、イタリアへ捨て身の突撃修行に行かれたお話しや、あちらの舞台がいかに凄いかと云う解説もあり、所謂コロッセオのような円形劇場の自然な音響構造の秀逸さや、そこで年間通してずっとオペラが上演されている、ヨーロッパの文化的な日常も理解できた。改めて自分の知ってる芸術の世界なんてほんの一部で、それ以外にもい~っぱい凄い作品があるんだなぁと、オペラが観たくなった。

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三番手、演劇・舞踏部門の受賞者は上方歌舞伎の上村吉太朗さん。なんとまだ21歳の若さだけれど、今回の受賞者の中で一番落ち着いてるんちゃうか…と思うほど、堂々とした美しい立ち居振る舞いとお話しぶり。ベテラン感すら漂っていて、ひょえ~~~と圧倒されたけれど、6歳で初舞台と言うから、芸歴は長い。とても努力されているのだろうけど、それ以上に伝わって来たのは、歌舞伎がとにかく好きで好きで仕方ないと云う熱意。そしてそんなダイヤの原石を大切に育てて磨いた、周りの方たちの芸や役者への愛も伝わって来た。

私は他の古典は見たことあるけど、歌舞伎だけはさっぱり知らなくて、目の前で少しだけ見得を切ってくださって、まぁなんと美しくカッコイイもんでしょう! 型の世界って凄いなぁ!と、一瞬のことだけど引き込まれた。

落語に比べて歌舞伎はきっと上方の勢いが少し弱いんかな?そんな中で活躍が期待されているだろうホープは、すぐにでも大黒柱になりそうな気配。舞台拝見してみたいです。

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お次四番手は、文芸その他部門で小説家の一穂ミチさん。流石は言葉を生業にされている方、一つ一つのお喋りも素晴らしく、その感性でどんなストーリーを文章にされているのか、とても興味が湧いた。会社勤めされながらの執筆活動と云うのも素敵☆ 自分自身が物語に救われて来たから、自分もまた書くことを愛していると云う気持ちが伝わってきて、みなさん、好きだから表現せずにはいられないのやなぁ…としみじみ感じる。

最新刊「光のとこにいてね(文藝春秋社)」は直木賞候補に挙がっているとのこと。帯や書評を見て、むくむくと読みたい気持ちが上がってくる。時間があれば読みたいなぁ…

books.bunshun.jp

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最後五番手は大衆演劇部門で落語家の桂二葉さん。メディアにめっぽう弱い私でもお顔とお名前くらいは存じ上げていて、でも全くどんな活躍されてるのか知らなかった。でも、この日のお客さんの雰囲気からも、もの凄く人気のある方なのだと理解しました。

今回の授賞式では急遽、この賞の第1回の受賞者・桂文珍師匠がごあいさつに立たれたのやけど、そこは同じ落語の世界と云うことで、しっかり二葉さんの活躍振りも紹介してくださり、そんなお話しの後での登場だったので期待してしまう。幸運なことに「金明竹」を一席聴かせて頂くことができた。前口上を聞いていると、イマドキの若いおもろいお姉さん…で、ゆる~い話しが楽しくて、そのまま本題もそんな感じかとおもきや、古典を語る時の空気感にビックリ!一瞬で話し方も伝わって来るものも変わって、ここはもう江戸時代。ほんま、「カチッ」てスイッチ入る音が聴こえた気がする(笑)。これが、人気の秘密なんやなぁ…と思った。そしてもう一つの秘密はファンの方へのサービス精神。式の終了後、誰よりも早く皆の前に出て来てくれて、撮影タイムのサービス。どうやら式の前にもなさっていたようで、流石です☆

katsuraniyo.com

 

いやぁ~~ほんまにいいもん見せてもらいました。そしてFM COCOLOファンとして嬉しかったのが、この日の司会が加美幸伸さんやったこと。始まるまで知らなかったので、自己紹介でお名前聞いて「え?!」ってなった。だって喋り始めた時は、どこかのアナウンサーさんやと思うくらいきちっとしてはったから…。市長さんや文珍さんが登場しての、賞贈呈の間は終始きちんと喋ってはって、受賞者との一対一でのトークになるといつものDJの口調になると云うメリハリ、これまた流石です☆ この色んな芸術の分野を横断しての授賞式、やっぱり加美さんが適任よねぇ…。で、終わってから後ろの席のサラリーマン風の方たちが「途中からCOCOLO聞いてるみたいやった…」と言ってて、思わず笑ってしまった。みんな同じこと思ってるw

 

あ、本題忘れてた。受賞者の方たちの紹介が終り、ちょっと押してのスペシャルゲスト・押尾コータローさんの登場。代表曲「Merry Christmas, Mr. Lawrence」で厳かに始まり、1曲弾き終わった時の、客席で初めて聴いたっぽい人達のどよめきに、何故かドヤ顔になってしまう私たちファンの図(笑)。次は、未来に羽ばたく受賞者の方たちにこれほどピッタリの曲はないだろうと云う「翼 ~you are the HERO~」。明るく華やかに打ち上がって大団円…とおもったら、拍手が鳴りやまず、まさかのアンコールへ。予定になかったようだけど、そこはサービス精神の塊り・押尾さんのこと、客席みんなで楽しめる「Big Blue Ocean」で、公会堂の大ウェーブ。老若男女、初めてこの曲を聴いた人もみんなノッてしまうのが、流石のナニワ魂です!全員やってたよw

 

今回授賞式に参加させて頂いて、関西人で良かったなぁ~とつくづく思った。「咲くやこの花賞」は元々、藤山寛美さんの寄付で始まったとのこと。なんと言う素晴らしお話し☆ そしてそれが40年続いていることも、素晴らしい。ほんとに素敵な賞だと今回感じさせて頂いたので、ずっとずっと続いて欲しい。
関西の文化は深くて濃くておもろい。そして、若い世代の人達が活躍されていことで未来も明るい。嬉しいし楽しい。文珍さん、福田さん、押尾さんだってまだまだこれから活躍される。みんなで一緒になって、花咲く関西文化がええなぁ。